一口にケース問題と言っても、問題のタイプは様々です。

最も出題率が高い「〇〇の売り上げ向上施策を考えよ」といった売上向上型の問題に加えて、面接では「公共課題解決型の問題」も多く出題されます。

公共課題解決型の問題とは、通勤時の混雑や感染症対策、観光客の減少といった社会的な課題に対する施策を考える問題です。

ケース問題のタイプによって問題における考え方が少しづつ変わってくるため、それぞれ個別の対策が必要になります。

※売上向上系の問題については、「ケース問題に挑戦！～面接対策～」の記事に例題を載せています。

ケース問題の基本的な解法についても説明しているので、ケース問題を解いたことがないという方は、先にこちらの記事をご覧いただくことをおすすめします！

■売上向上型と公共課題解決型の共通点

問題のパターンが変わっても、ケース問題の基本である

「前提確認・定義づけ⇨現状分析（構造化）⇨ボトルネックの特定⇨打ち手の列挙⇨打ち手の評価」
という一連の流れは変わりません。

■売上向上と公共課題解決の相違点

売上向上型の問題では、基本的に「売り上げ」を構成する要素を分解して式を作り、どの要素がボトルネックになっているかを特定するという流れが多く、こうした構造化・ボトルネックの特定の部分が重要です。

一方、公共課題解決系の問題では、売上向上系の問題以上に「誰が」「どのような目的で」その課題を解決したいのかという点が曖昧なので、出題意図を把握して問題文の解像度を上げることが重要で、そのために前提確認・定義づけをしっかりと行う必要があります。

また、その問題についてある程度の事前知識がないと、現実と乖離した効果の薄い施策が結論となってしまう場合もあるので、日頃から社会問題に関心を持っておく必要があります。

出題率は少し下がりますが、ケース面接では以下のような問題も出題されることがあります。

■抽象的なお題

「良いリーダーシップとは何か」など、抽象度の高いテーマが与えられる場合もあります。

こうした抽象的お題は個人面接よりもグループディスカッションでの出題率が高い傾向にあります。

■公共テーマの動向

出題率は高くありませんが、「日本の自動車市場は今後どうなっていくか」など、社会動向を問う問題もあります。公共課題解決系の問題と比較し、社会や特定の業界についてより深い知識や洞察が求められる、難易度の高い問題です。

■選択肢問題

こちらも出題率は低いですが、あるテーマについて賛否を答えたり、複数の選択肢から最良のものを選ぶような選択肢問題もあります。

では実際に公共課題解決型のケース問題を解いてみましょう。

問題：教員数不足を解消するための施策を考えよ

以下は問題の解説になるので、解説を見る前に是非みなさんもこの問題を解いてみてください。

答えは出せましたか？それでは解説を見ていきましょう。

まずは明示されていない前提条件を定めていきます。
・地域：日本
・主体（クライアント）：日本政府
・期間：５年
・目的：教員１人あたりの負担を減らしてより良い職場環境を実現し、教育の質を高める

定義づけ

次に、意味が抽象的な単語の定義づけを行っていきます。
「教員」
・学校教員を指す（✕学習指導塾の教員）
・教員には小学校教員、中学校教員、高校教員、大学教員がいる
・特に不足しているのは小学校と中学校の教員
・単純化のため、ここでは「中学校教員」に絞る

「不足」
どのように不足しているのか
①教員が足りないため、教えたくても授業を行えていない科目がある
②教員１人当たりの受け持つ学級数、仕事量が多すぎる

という二つのパターンが考えられます。多くの学校で、各科目の授業を行えるだけの教員は在籍するが、各教員にかかる負担が大きいという状況であると考えられるため、②のパターンで「不足」していると推測できます。

以上より、与えられた問題文を以下の様に読み直すことが出来ます。

「人手不足により、中学校教員１人当たりの受け持つ学級数や業務量が多くなり負担になっている。この状況を解決したい。」

現状分析を行う前に、この状況を改善するためには大きく２つの方向性があることを確認しておきましょう。

①教員数を増やして負担を軽減

②人員を増やすのではなく、教員１人当たりの業務負担を軽減できるような工夫をする

以下、現状分析です。

＜①の方向性＞
教員数は以下のような要素で成り立っています。
：教員数=教員志望者数×教員試験合格者数×教員職選択率×教員継続率

そのため、教員数を増やすためにはこれら４つの要素のうちのどれかを増やすことが必要になります。

次の段階では、これらの要素のうち、どれがボトルネックとなっているかを特定していきます。

＜②の方向性＞
教員の業務負担軽減の方法を考える上で、まず教員の業務にはどういったものがあるのかを網羅的に書き出します。
・授業関連
　―授業準備
　―小テストや試験の採点

・学校生活
　―生徒との面談／保護者対応
　―クラスだよりの作成など事務作業
　―修学旅行や校外プログラムなどの引率

・部活動
　―顧問として練習出席／大会等引率
　―部活動の事務作業

①と同様に、次の段階ではどの業務がボトルネックになっているのかを特定します。

＜①の方向性＞

教員数を増やすためには４つの要素のうちどれかを伸ばす必要があります。

どれが伸ばすべき要素でしょうか。

「教員志望者数」
：教員志望者数の減少は深刻な問題であり、対処が必要。しかし５年というスパンで志望者数を増やすことは難しい。

「教員試験合格者数」
：安易に試験通過者を増やすと、最低限の教員の質が担保されなくなってしまう。そうなれば、質の高い教育を行うために教員数を増やしたいという目的に対して本末転倒。

「教員職選択率」
：教職免許を取ったが他の職業に就いたり、教員になる決心がついていないパターンは多いのではないか。この要素をボトルネックとする。

「教員継続率」
：教員が辞めてしまう理由は負担の大きさから。教員数不足が改善された結果として継続率も向上するはずで、この問題におけるボトルネックではない。

＜②の方向性＞

現状負担が大きく、かつ業務負担軽減の余地がある業務がボトルネックとなります。

「授業準備」
：教員は授業準備にかなりの時間をかけており、負担軽減の余地がある業務である。

「採点業務」
：テスト前後は休日を返上して採点業務を行っている教員が多いようで、大きな負担となっているはず。

「生徒面談／保護者対応」
：通常の定期面談は今以上の効率化、負担減は難しい。
：定期面談以上に生徒指導や不登校生徒・いじめへの対応などのイレギュラーな部分が負担になっているのでは。
：そういったイレギュラーな部分は近年ますます件数が増加していて社会問題となっている、スケールが大きく５年で取り組むのは難しい。

「学校生活関連の事務作業」
：年間を通じてある係や委員会、ホームルームなどは、教師・学生ともに学校生活に占める比重が小さいことが多い。それに比べ、学校行事は活動規模が大きいが、学生主体で動かすことが多く、業務負担は小さい。

「修学旅行等の引率」
：業務が発生するのは年間で数日程度で、業務負担は比較的小さい。

「部活動顧問として練習出席／指導・大会等の引率」
：練習に顔を出すか否かは教員によって個人差があると思われるが、もし常時出席を強いられている場合、大きな負担になっているはず。
：大会や練習試合の引率についても、月二回、週末に引率があると仮定すると、毎月平均10時間ほど拘束されることになり、やはり大きな負担である。

「部活動関連の事務作業」
：負担は小さくないと考えられる。しかし、事務作業負担を軽減する場合外部委託などが考えられるが、生徒の個人情報なども扱う事務作業を学校関係者でない人に依頼することは難しいのではないか。

以上より、「教員職選択率」「授業準備」「採点業務」「部活動の練習出席／大会等の引率」がボトルネックであると特定されます。

それぞれに対する打ち手（施策）を考えていきます。

「教員職選択率」
：教員・講師の賃上げ、採用・就労開始時期の枠の増加など、新卒・中途にかかわらず教員に就くインセンティブの増加とハードルの低下を同時に図る。

「授業準備」
：授業準備をサポートするようなデバイスや教員用資料を導入する。

「採点業務」
：マークシート式答案やオンラインテストの導入を全国的に進め、採点業務の自動化を行うことで、業務時間を削減することができる。

「部活動顧問として練習出席／指導・大会等の引率」
：外部指導員を雇い、練習指導や大会引率の業務を委託する。

最後にこれらの打ち手を、「効果」「実現可能性」の観点から評価していきます。

「教員職選択率」
：企業勤めと同じように転職活動できたり、給料をもらえたりすることで、人材が集まる可能性は高い。しかし、学校行事や年次ごとに学年が変わるなど学校スケジュールの柔軟性は低く、賃上げの期待もあまりできないため、非現実的。

「授業準備サポート」
：デジタル化で業務効率の向上化は見込める。ただ、一クラスの人数や生徒の習熟度別に授業内容を変える必要があるため、教員のクリエイティブ性が必要になる部分は残る。

「採点業務の自動化」
：作業スピードはかなり速くなるので効果は抜群。コロナの影響により、タブレット教材の普及率も上がっているため、実現可能性は高い。

「外部指導員に業務委託」
：業務負担減の即効性は高い。しかし、私立の部活強豪校など財政に余裕がある学校はすでに外部指導員を雇っており、それができない公立校への財政的補助が必要である。少子化の中、直近５年で政府がその予算を捻出できるかどうかはやや微妙。

以上より、教員数不足の解消には、［採点業務の自動化］が必要であると考えられます。

ケース問題の考え方は一般的なグループディスカッションでも応用できます。

ケース面接の練習を積んでおくことで、海外大生に人気のある外資系コンサルや総合商社の対策はもちろん、様々な企業の選考にも活きてきます。

様々な人からフィードバックをもらい、次に活かしていくことが上達のカギです。

そのため、友人や先輩などなるべく多くの人と面接練習をして、経験を積んでいくと良いでしょう。

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